だれも追ってきてはいない。
そのことに安堵しながらも、足は止まらない。
足を止めるわけにはいかなかった。
いつなんどき、なにかに襲われるとも限らない。
足はもう、前には動かないのに。
足の裏はもう、痛くてついているのがやっとなのに。
私はまだ。
まだ、倒れるわけにはいかない。
まだ。
追いつかれるわけにもいかない。
足よ、動け。
まだやれる。
まだいける。
動け。動け。動け。
あの闇に向かっていけ。
あの坂を上っていけ。
その川を飛び越えろ。
その崖を飛び越えろ。
あなたも、わたしも、たしかに足で地面を蹴っている。
それだけが、変わらない事実。
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